日本理論心理学会

The Japanese Society of Theoretical Psychology

ごあいさつ

歴史の長い日本理論心理学会の理事長に就任することになり、微力ながらも、学会の発展のために、会員の皆様と協働し、大いに努力したいと思います。

言うまでもなく、心理学の研究を進めるさいに、理論が主導的な役割を果たします。心理学の先人は、物理学を心理学方法論の模範としたようです。すなわち、操作的に定義される概念によって表現された研究仮説は、再現可能な形で取得したデータによって、その仮説の真偽が判定されるというプロセスが理想として想定されました。しかし、心理学では、実証的なプロセスによって確証された仮説やそれらをまとめた理論だけでは、心理学を応用した実践には間に合わず、必ずしも、データによって実証されない部分を含めて、心に関する全体像を構成する理論が必要です。仄聞するところによれば、物理学においても、最新の技術によって得られるデータによって、理論の修正や新たな理論を必要とするようです。当然、心理学においては、理論と実証データとの間の関連付けは、より深い洞察と議論を必要とし、そのような理論を十分に議論する場として、日本理論心理学会が非常に重要であると考えます。

しかし、現状では、日本理論心理学会は日本で3番目に古い学会でありながら、日本の心理学ワールドにおいてしかるべき位置を占めていないように感じます。本学会の諸活動を広く伝える努力が必要です。日本において創始される理論を発展させることは、興味深い国際的な研究を生み出す源であり、日本の心理学における理論研究を発展させるために本学会がやるべきことが多いように思います。

日本理論心理学会理事長 繁桝算男